「数学」とは何か?

数学とは何か?と言う問いに答えるのは、数学者にとっても意外と難しい。多くの人にとって数学は、小学校(算数)の頃から取り組んでおり、かなり身近にある存在だと思う(好きか嫌いかは置いておいて)。数学とは何か?なんて、誰でも分かると思っているかもしれない。しかしそのような「数学とは何か?」と言う問いに厳密に答えることは、そんなに簡単ではない。

数学には「ゲーデルの不完全性定理」と言う定理が存在する。この定理は普通の数学の定理とは毛色が違い、数学そのものについて述べた定理である。分野で言うと、数学基礎論、あるいは数理論理学と言う分野に属する定理である。数学科の学生なら一度は聞いたことのある名前であるが、そのような学生に不完全性定理と何か?と問うてみると、ほとんどの人は「数学は不完全であることを証明したもの」であるとか、あるいはもう少し詳しく「数学には真(正しい)とも偽(間違っている)とも証明できない命題が少なくとも一つは存在する」と答える。しかしそもそもここで言う「数学」とは何を示しているのか?それをはっきりしないと「数学は・・・」と言う説明は意味を持たなくなる。

数学の理論を構築する時、必ずその出発点となるものを定めなければならない。その出発点となるものが「公理」と言われるものである。公理を基に定理を証明する。これが通常の数学である。そこで何を公理とするか?と言う違いによって、その後の展開が変わってくることは容易に想像できる。すなわち、何を公理とするかによって、様々な数学ができる訳である。通常取られる公理系は、ZFC(ツェルメロ(Z)・フランケル(F)の公理系に選択公理(C)を加えたもの)が採用される。すなわち不完全性定理は「ZFCが不完全である」と言える。

ZFCからC(選択公理)を省いた公理系を取ることもできる。そうすればまた違う数学が構成されるとも言える。このような事を考えると、どんどん数学の沼にはまっていく。しかしこの数学の沼にはまるのも数学者としては悪くない。そこをとことん突き詰めた数学基礎論と言うものは、数学を根本的に理解するためには不可欠だ。ただほとんどの大学数学科でも、数学基礎論の講義は全くないし、あるいは無視されている。僕自身も数学基礎論のカリキュラムは受けたことがない。しかしだからと言って、数学基礎論を無視することはできないはずだ。

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