システム化された現在のF1レースをめぐって。強者メルセデスAMGと野村ID野球

とある記事で、今年のF1レースがつまらないという論を読んだ。その理由はこうだ。現在のF1はチーム外の情報解析戦略者が数人いて、その人たちが情報を瞬時に解析し、衛星回線を通じてチームに指令を出し、チームはそれを実行するのみだというのが面白くないというものだ。現在のF1にドライバーの判断権利はほとんどないらしい。そのような情報至上主義なレースがどうやら不評なようだ。ファンはドライバーの人間ドラマが見たいらしい。

思えば昔、プロ野球でも同じような革命が起こった。ヤクルト野村克也監督のID野球だ。その当時、情報至上主義の野村ID野球を批判する人は多かったように思える。その理由は今回のF1と同じものだ。「人間ドラマが見たい」

当時、野村監督と古田敦也捕手が中心になってID野球を実行するヤクルトは非常に強かった。ID野球への批判はその強さに対するひがみもあったのかもしれない。強すぎるものは、すなわち出る杭は日本ではいつの時代でも打たれる。しかしその批判こそ野村ID野球の素晴らしさを物語っているのではないか。

プロ野球もF1も、プロ中のプロたちが戦う場だ。負ければ容赦なく切り捨てられる。ルール内でいかに効率的な勝ち方をするのか、競技が洗練されてくれば自然とたどり着くところではないか。ましてやF1には桁違いのお金がかかっている。レースの結果は本業の車作り・販売に直接影響が出る。遊びの要素など一つもない。

現在、プロ野球でID野球という言葉はなくなった。しかしそれはID野球が無くなったのではなくて、ID野球が常識になったのであえてその言葉を口にする人がいなくなっただけである。しかし現在のプロ野球も非常に面白いものである。いかに情報を上手く利用するか、そのような面白味も出てきた。

F1も今はID野球が通ってきたような過渡期なのだろう。数年すれば、情報戦略ドラマを見るような面白味を見出すファンも増えるに違いない。

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