メリットとデメリット。

現在、ワクチン接種をするかどうかの判断が問題になっている。ワクチンに限らず、どんな薬でもどんな医療でもリスクはつきものであり、少なくともゼロリスクと言うものはあり得ない。そこでそのようなリスクをどう評価するかが問題になってくる。するか?しないか?の判断を下すとき、人間なのでどうしても感情的な事やイメージなどが入り込んでくる。そのような事抜きで判断する事は実際非常に難しいことだ。しかしそのような判断をするときに最も大事なのは、メリットとデメリットを天秤にかけてどちらが大きいかと言う事を比較することだ。

何度も言うが、ゼロリスクと言うものはあり得ない。道端を歩いていても、車が突っ込んでくる可能性もゼロではない。しかしほとんどの人はそんな危険性など考えずに気軽に道を歩き回っている。それはなぜかと言うと、道を歩いて事故に遭う危険性と、家に籠って自由に歩き回れないデメリットを無意識に比較しているからだ。そしてほとんどの人は、家から一歩も出ないことによるデメリットの方が大きいと判断する。さらに言えば、家に車が突っ込んでくる可能性もゼロではないので、家にいることが必ずしも安全だとは限らない。

ワクチンのメリットデメリットを判断する時に最も重要になるのは、副反応(副作用)が起こるかどうかではなく、どれくらいの確率で副反応が発生するかだ。この確率が高ければワクチンの危険性が高いと言う事なので、接種しないと言う選択肢も十分にあり得る。しかし重篤な副反応が100万人に一人の確率で発生するとどうだろう。この100万に一人と言う確率はそのままではイメージしづらいが、満員の甲子園の収容観客人数が約5万人なので、甲子園を20個満員にしたときその中から一人発生すると言う事だ。2020年の交通死亡事故人数が2839人なので、去年交通事故で死亡する確率は、約42000人に一人ほどだ。そして2021年4月10日時点の情報では、コロナによる国内死亡者数は9364人。これを割合で表すと、国民約13000人に一人である。現在アストラゼネカ社のワクチンによって血栓ができると言う副作用が報告されているが、その割合は(イギリス国内の統計では)約2000万回接種して死亡者が19人。なので単純に計算して(一人二回接種することを考慮して)約50万人に一人である。なのでコロナに感染して死亡する危険性の方が圧倒的に高い。

そしてもう一つ大事な事は、副反応と思われるものが本当にワクチン接種と因果関係があるのかと言う事である。ワクチンを接種しなくてもその時期に死亡する人は当然存在する。そのような人が偶然ワクチン接種の時期と重なったと言う可能性は十分にありえる。もちろん100人くらいの集団ならそのような可能性はほぼ皆無と言っていいが、数千万人の集団接種となればそのような人が何十人と出て来る事はむしろ当然のことである。なのでワクチンとの因果関係ははっきりと追究しなければならない。そしてメディアには、単にワクチン後に死亡したと言う事例をセンセーショナルに伝えるのではなく、因果関係がどれくらいあるのかと言う事をはっきりとさせて正確な情報を伝える義務がある。もしメディアが視聴率だけを考えて因果関係がはっきりしない死亡例をセンセーショナルに伝え続けてしまえば、結局最後には国民の首を絞めることになる。

今国民一人一人が、メリットデメリットを正確に判断できるかと言う判断力が試されている。学校で習う勉強が実際には社会で全く役に立たないと言う声をよく聞くが、ワクチン接種の判断をする上では大アリなのである。生物学的な知識、社会的な知識、そして何より数学的(特に確率的)な思考力が大きくものを言ってくる。そのような知識を総動員して正確な判断が出来ないと、回り巡って自分の不利益として跳ね返ってくる。それはもしかしたら命にかかわることかもしれない。そのように考えると、基礎的教養としての学問がいかに大事かと言う事が思い知らされる。

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