日本では技術力が過度に高く評価される傾向がある。もちろん高い技術力がある事は素晴らしいが、ただ技術力があるだけでは何も成し遂げられない。技術というものは何かに応用して初めて威力を発揮するのであって、その「どのように応用するか?」というアイデアなしでは何も成し遂げられない。
逆にアイデアだけでも何も成し遂げられないし、学問で言うと、アイデアだけでは単なる素人の妄想でしかない。アイデアは具体的に構成して初めて意味を持つ。その具体化は技術によって成し遂げられる。
すなわち必要なのは、技術とアイデアの双方なのである。この二つは車の両輪である。片方が欠けても前に進まない。ただ、役割分担と言う事は出来る。アイデアを出す人と技術を持っている人が融合すればいい。もちろん、一人でアイデアと技術の両方を持っていれば理想的であるが、なかなかそのような人はいない。企業も同じで、良いアイデアと高い技術力の双方を持ち合わせている企業は少ない。
今日本で問題になっているのは、高い技術力を持ちながらも良いアイデアを出せない事である。日本の技術力は誰が見ても世界トップレベルである。しかし、現在非常に威力のある分野であるスマホ製品を見ても鳴かず飛ばずである。僕自身も日本企業は高い技術力を持っていると思いながらも日本製品に魅力を感じず、アップルのiPhoneを愛用している。日本企業がiPhoneのような素晴らしい製品を作ってくれればどれだけ良いかと思うが、現状を見るとそれは期待できない。日本企業は高い技術力を持ちながらも、アイデアは他国企業の後追いばかりである。
数学においても、計算力が抜群にあろうが豊富な理論的知識があろうが、それをどのように発展させるかと言うビジョンがなければ新しい理論を構成することはできない。もちろん、数学以外の学問においても同様であろう。学生のうちは、熱心に勉強してたくさんの知識を身に付ければ良い。本もたくさん読めば良い。しかし、学生を卒業した後はそれらの知識を基にアウトプットをしていかなければならない。そのためには、読書をして技術を付けるだけでは何の進展も望めない。アウトプットするためには、はっきり言ってビジョンなき読書は無力なのである。アイデアを基に実行しなければ何も生み出せない。今、日本が陥っている「技術バカ」ではなく、また「アイデアのみのド素人」でもなく、「技術とアイデアの双方を兼ね備えた実行家」として遂行することが必要なのである。