今年(2024年度)のノーベル賞では、物理学賞及び化学賞の二賞でAI関連の研究に対して授与されることになった。物理学賞ではAIの基本的原理「人工ニューラルネットワークと機械学習の研究」に対して、化学賞では「AIを使ったタンパク質の構造の研究」に対して賞が贈られた。化学賞の受賞者の中にはGoogleのAI部門の研究者もいるし、まさしくAIの波がノーベル賞にも一気に押し寄せてきた感がある。
僕はここ数年、AI時代において数学や科学の研究はどうあるべきか?ということを考え、悩み続けてきた。しかし今回のノーベル賞を見ても明らかなように、確実にAIの流れはやってきている。しかしそこで安易に「研究にAIを用いるべき」と片付けても良いものだろうか?僕はそうは思わない。確かにAIを用いれば簡単に答えが見つかることも多々あるだろうし、結果を出すだけが目的なら多くの人がAIを用いるであろう。
その一方、数学などは「思考するスポーツ」と言う側面もあるのも事実である。言い換えると「自分の頭で考えてナンボ」と言う世界である。そして何より、自分の頭で思考することが何よりもの喜びであるのが多くの数学者の思うところであると思う。もしかしたら(数年後?)、AIが数学の研究をする時代が来るのかもしれない。しかし僕は、「AIがする数学はもはや数学ではない」と考えている。やはりどう考えても、人間が自らの頭で考えてこそ数学であると思えてならないのである。
これからAIを用いれば何でも簡単に結果が出せる時代が来るのだろう。しかしそんな時代だからこそ、自分の頭で思考することを徹底的に貫くのも強烈な人間性として認知されるのではないかと思う。もちろん今回のノーベル賞受賞研究のように、AIを使った科学研究はこれから一般的になっていくのであろう。しかし「思考する学問」としての数学・科学も独自の価値を保ち続けるのではないかとも強く思う。僕自身もAIとの付き合い方でかなり悩んではいたが、やはりどう考えても僕の取るべき道は、「AIに頼るのではなく自分の頭で徹底的に思考することだ」と言うことでしかない!
今回の記事では数学・科学とAIはどう付き合っていくべきか?と言うことを取り上げたが、これは「人間が人間として生きていくためにはどうすべきか?」と言う問題につながるのだと強く思う。