僕のブログでもしばしば数理物理という名前を出しているが、そもそも数理物理学とはどのような学問なのか?ということを書いて見よう。
何を研究しているか?と聞かれた時、ほとんどの研究者は“分野”の名前を答えるだろう。例えば物理であれば「素粒子論」だとか、数学であれば「微分幾何学」だとか言うだろう。しかし「数理物理学」とは分野の名前ではないと僕は思っている。では何か?それは“手法”の名前である。
数理物理学とは「数学的理論と技術をフルに駆使して研究する物理」だ。だから同じ数理物理学研究者でも、全く違う分野を研究している人がいる。また物理寄りの数理物理学研究者がいれば、数学寄りの数理物理学研究者もいる。ただ確実に言えることは、数理物理を研究するためには数学と物理の知識を両方持ち合わせていなければならないということである。
数学と物理の両方が大好きな人にとっては、数理物理とは天国である。数学でも遊べるし、物理でも遊べる。また学際分野だとも言え、数学と物理の融合の仕方も千差万別である。この融合がまた面白い。
数理物理学の研究者で今世界で最も活躍していると言われている人は、プリンストン高等研究所のエドワード・ウィッテン教授である。ウィッテン教授は同じテーマでも数学と物理の両方の論文を書くことでも有名である。ウィッテン教授の代表作(これがまたたくさんある)の一つであるサイバーグ・ウィッテン理論の論文は、数学者と物理学者の双方に対して大きな影響を与えた。ただウィッテン教授の次の世代が台頭することが望まれるが、ウィッテン教授の勢いはまだまだ健在だ。
ウィッテン教授の研究は絶大なインパクトがあり、「流行を作り出す数理物理学者だ」と言える。しかし世の中の多くの学者は、流行に乗り合わせているというのが現状かも知れない。今多くの物理学者や数学者に対して求められているのは、流行に飛びつくことではなく、流行を作り出せる独創性を発揮することではないかと僕は強く感じている。