日本の建築文化への疑問

今日本では、住居を建てても30年から50年くらい経つと取り壊して立て直すことが普通になっている。家は古くなると新しく建て直すものだという認識が広まっているのだ。それに沿うように、建築会社も数十年で建て替えることを前提に新築住居を建設している。しかしこのような異常な取り壊し文化は日本だけみたいだ。

もちろんそれには日本特有の事情もある。日本は世界一の地震大国だ。古くなって耐久性の低くなった建物は耐震基準に合わず、新しく建て直すことになる。しかしその一方、千年以上前の文化財と呼ばれるような建築物が幾度もの大地震を乗り越え今も現存している。五重塔は地震の揺れを吸収するように揺れる構造になっている。今の言葉で言うと免震構造とでも言うべきか。昔の人の知恵に驚かされるものである。

最近、東京のホテルオークラが建て替えられることになった。ホテルオークラは名建築物とも言われ、取り壊し反対の声も大きい。数か月前にオバマ大統領が来日した際に宿泊したのもホテルオークラだった。

今、人々の意識も使い捨てからリサイクル、あるいは良い物を長くというふうに変わってきている。その風は建築にも当たらないだろうか。もちろん長く残せるような建築物を作ろうとするとそれなりに費用もかかる。しかし「良い物を長く」という思想は必ず日本国民の中に受け入れられるはずだ。そして高度な文化を発展させるためにはそのような思想は絶対条件として必要だと思う。

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