以前の僕は専門バカと言ってよく、専門の数学と物理以外はほとんど取り組むことはなかった。しかし最近はいろいろな分野にも手を伸ばしており、その中の一つとして化学にも取り組んでいる。しかし化学の醍醐味はある意味実験にあるともいえるが、もちろん僕には実験を行う技術も施設もない。なので化学と言っても理論分野に限られる。しかし理論だけでもかなり広がりがあり、やる価値は十分にある。
理論化学の中でも特にやりがいがあると思われるのは量子化学である。量子化学とは名のように量子力学を化学の理論に持ち込んだものである。すなわち物理学(量子論)と化学を融合し繋ぎ合わせる分野だと言える。このように他分野同士を結び付けると言うことは非常に重要な視点である。福井謙一博士は化学理論にいち早く量子力学を持ち込んだパイオニアで、その功績によってノーベル化学賞を受賞されている。
最近の科学理論は極度に細分化されていると言われている。同じ物理学の研究者同士でも、隣接分野の事になると全く理解していないと言うこともよくある。もちろん研究的教養のある研究者は、他分野の専門家以上の知見がある人も中にはいる。研究者にとっては科学の研究は仕事である。そう考えると自分のテリトリーの中で結果を出し、それによって自分のポジションが確保できれば良いと考えるのも無理はない。しかしそのような研究者は所詮その程度だと言うだけである。
僕はこれまでジェネラルサイエンティストと言う言葉を何度か言ってきた。つまり全ての科学分野に対してその分野のスペシャリスト以上の知見を有する科学者の事だ。もちろん、ジェネラルサイエンティストになれるのは、科学者のうちのさらに一部だと思う。しかしそれに挑戦することは非常にエキサイティングなことである。しかしそれを達成するまでは、あらゆる意味で苦しい状況にさらされる。しかし挑戦の先の極限を目指せば自然にそこへ辿り着くのであって、本当に科学に人生をささげて挑戦するのならば、そこを目指すしかない!