物理学の形式主義。

近年、物理学は、ますます形式主義に傾いてきているように思える。このような形式主義を批判する人も多いが、その一方、形式主義は多くの恩恵をもたらしてくれる。では物理学の形式主義とはどういうことか?それは「数学的形式」だと言える。そもそも、物理学はその誕生時から数学と密接に結び付いている。ニュートンが力学を打ち立てた背景には、ニュートン自身による微分学の定式化がきっかけとなっている。物理学は数学的定式化を成功させて初めて成り立つのである。

物理学の中でも、数学に対する依存度は様々である。物性理論よりも素粒子論の方が圧倒的に数学的である。さらには、数理物理のような物理学の数学的定式化自体を目的にしたものもある。物理学から数学を遠ざけることはある意味退化だと言える。しかしそれが退化だとしても、それに意味を見出し生き残っていく可能性は大いにある。しかし物理学の進化は数学の発展を用いて初めて成し遂げられることが多い。

20世紀中ごろ、数学界では構造主義という考えが吹き荒れていた。フランスの数学者集団ブルバキが強く推し進めていた考えであるが、僕はこのような思想は今の物理でこそ威力を発揮するのではと考えている。今の数学や物理学におけるキーワードは「多様化」であると僕は感じている。なのでそれらの学問を一つの思想の下でまとめることは不可能である。しかし僕は、物理学の構造主義を大きく推し進めて行きたいと考えている。

現在、学問の多様化を推し進めるあまり、全ての分野において平等化が起きているように思える。しかし多くの理論の中には、重要なものもあればそうでもないものもある。これらを一律に並べることは避けるべきである。なぜなら、一律に並べる、すなわち重要度を判断しないということは、物事の本質を掴めていないということである。しかし、まだ開花していない取り組みを評価することは非常に重要である。しかし、現在の評価基準は全く逆転している。ビジネスでベンチャー企業を支援することが重要であるように、科学でも可能性のあるベンチャー研究を支援すべきである。山中伸弥教授のiPS細胞は、そのような大きな可能性のあるベンチャー研究を支援することにより花開いたのである。

現在、科学の世界は多様化しているが、構造主義的に推し進めることは最も大きな可能性を秘めているのではないかと僕は強く感じている。

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