(過度な)整理整頓は必要ない!

子供の頃から整理整頓をしなければいけないと教えられた人は少なくないと思う。おそらく学校では例外なく整理整頓をしろと強制されてきたであろう。普段から几帳面に整理整頓ができる人はいいが、僕のように整理整頓が苦手な人にとっては苦痛でしかなかった。

しかし、僕は身の回りのものをある程度散らかすということは大事なことだと思っている。世の中というものは、すべてが整理されている訳ではない。混沌とした中で何がどこにあるのか?そしてその中で本質的な所はどこか?このような事を認識する嗅覚は混沌と散らかった中で養われるものだ。

身の回りを整理整頓すること以上に大事なのは、頭の思考を整理整頓することだ。そして相反することのようだが、頭の整理整頓は身の回りの物をある程度散らかすということから養われる。残念なことに、身の回りを(過度に)整理整頓している人は、頭の思考回路の本質的な整理整頓に欠け、形式的な整理に終始している人が多いように感じる。

ここで一つ実例を挙げよう。僕が大学院時代に接した研究者の中には非常に優秀な研究者が何人かいた。その中の一人にフィールズ賞(数学のノーベル賞と言われている)を取るのではないかと言われていた優れた数学者がいた。その数学者の頭の思考回路は非常に明晰だ。しかしその一方、研究室の机の上は専門書が山積みでプリントや論文が溢れかえっていた。一体この数学者はどこで研究をするのだろうと不思議に思っていたが、器用に場所を見つけ、次から次へと重要な論文を書き上げていた。その数学者の印象は僕の中に強烈に焼き付けられている。

確かに自分の活動するフィールドによって求められる能力は違う。だから人によっては整理整頓をすることは非常に重要であろう。(というより、このような人の方が圧倒的に多いかもしれない。)あくまで僕の個人的な実感であるが、数学や物理などの究極的にクリエイティブな分野では、「散らかった中でどのように物事を試行錯誤し俯瞰するか?」という能力が求められる。しかし常に(過度に?)整理整頓された環境ではそのような試行錯誤を行う環境に乏しいし、また本質的でないところに気をとらわれ過ぎてしまう危険性がある。

身の回りの物の整理整頓よりも、頭の中の整理整頓の方が圧倒的に重要である!

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