iPod操作ボタン訴訟でアップル社が敗訴

高裁で、iPod操作ボタン訴訟があり、アップル社が敗訴した。訴えていたのは日本の発明家で、損害賠償100億円を要求していたが、今回の訴訟では高裁は約3億円の支払いを命じた。3億円も巨額な金額だが、アップル社にとっては微々たるものだ。訴えた発明家も、要求の100億円には遠く及ばないものの、巨大企業のアップルに勝訴したことで納得したようだ。

このiPodの操作ボタンは、一昔流行した円形のグルグル回すタイプのもので、当時の僕もよくもこんなものを発明したものだと感心したものだ。てっきりアップルが開発したのかと思いきや、日本の発明家が発明していたとはびっくりである。

この訴訟を見て思い出したことがある。数年前の青色発光ダイオードの中村修二さんの訴訟だ。中村氏は去年のノーベル物理学賞日本人トリプル受賞の一人で、同時に受賞した赤崎氏・天野氏の基礎研究に基づいて中村氏が青色発光ダイオードの量産化に成功した。

中村氏の訴訟は元所属の日亜化学を訴えたものだが、そこでの判決は中村氏は600億円を取得する価値があるというものだった。これは発明者に対する画期的な判決だったが、一つ気がかりなのはこの手の発明対価が最終工程の開発者のみに権利が与えられることである。青色発光ダイオードについていえば、量産化に成功した、すなわち最終工程に関わった中村氏に発明対価の権利があり、その成功のもととなった赤崎氏らの基礎研究には何の見返りもない。

もともと基礎研究はお金にならないものがほとんど、いや全部と言っても言い過ぎではないくらいだが、この基礎研究組にもそれなりの報酬を与えるような仕組みはできないものかと思ってしまう。基礎研究は本当に研究が好きでないとやっていられない。また確固たる強い意志も必要だ。この様な基礎研究者に必要な条件は日本人気質に向いているともいえ、それが最近のノーベル賞日本人受賞ラッシュにつながっているのかもしれない。

しかし基礎研究は応用研究・開発の源であることは言うまでもない。基礎研究者の処遇をおろそかにすると、技術立国日本の立場も将来的に危ういものにしてしまうかもしれない。

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