人間の臓器と、セイコーの時計に共通する機構と精神。

山中伸弥先生と山中先生が発見したiPS細胞に非常に興味を持っており、先日、iPS細胞の現状を解説する動画を見ていた。iPS細胞の話はいつ聞いても非常に将来性のある、非常に魅力的な科学技術だ。改めてiPS細胞の凄さと山中先生の成した偉業に感嘆した。

ところでiPS細胞は万能細胞であるから、心臓や筋肉の細胞にも分化できる。しかし心臓や筋肉は鼓動や運動を行うわけであるから、何かしらの刺激を与えて動かしてやらなければいけない。その信号が電気信号である。

脳からの指令は電気信号として目的の臓器へと伝わる。iPS細胞から作成された臓器の卵にも、電気信号を与えることによって鼓動などの運動をさせることができる。即ち人間の体は電気信号によって高度に制御されているのだ。

この様な話を聞いてふと思い出したのが、日本が誇る世界的時計企業セイコーの腕時計だ。時計の歴史は簡単に言うと、昔からある機械式、1960年代にセイコーが開発して一気に腕時計の主役に躍り出たクォーツ式がある。ゼンマイで動く機械式に対して、電気信号で非常に正確に制御をしているのがクォーツ式である。

そしてセイコーは1990年代、機械式とクォーツ式のいいとこどりをした新機構「スプリングドライブ」を発明した。簡単に言うと、動力はゼンマイから得て、その動力によって微弱な電流を起こし、クォーツ式の原理で制御しようと言うものだ。これは世界でもセイコーにしかできない画期的最先端技術だ。(最近になって、ピアジェが似たような機構を開発した。)

ところで人間の臓器とセイコーの時計をなぜ取り上げたかというと、この「繊細な電気信号で動きを制御する」という機構が臓器と時計で非常に似ていると感じたからだ。物を作るだけなら作れるかもしれない。(いや、実際は時計を作るのは非常に難しいが。)しかしそれを自分の力(すなわちゼンマイ)で電気信号を起こし、制御するという機構は、時計界ではセイコーだけが、そして医療界では日本発の技術であるiPS細胞が大きくリードしている。

この時計作成と臓器作成、全くの異分野に思えるが、その根底に流れる思想の一部は共有しているのかもしれない。これこそジャパニーズスピリット、世界をリードする原動力である。

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