多数決は絶対的か?イギリス国民投票から考える

先日、イギリスで、EUからの離脱か残留かを問う国民投票が行われた。結果はご存じのとおり、離脱派の勝利となった。ところがその後、イギリス通貨・ポンドは大幅下落し、世界経済は軒並み下落した。さらにイギリスの一部であるスコットランド、北アイルランドがイギリスから独立しようという機運が高まっているという。もしそうなれば、イギリスは解体し、イングランドへと縮小する道をたどることになる。

イギリスは言わずと知れた民主主義先進国である。民主主義の基本理念は単純に言うと多数決にある。今回の国民投票も多数決によって国家の行方を決めようというものであった。しかし今回の投票後の状況をみると、多数決社会の絶対性に疑問を抱かさざるを得ない。

もちろん、「民主主義」という言葉通り、民主主義国家では主権は国民にあり、国民が国の行方を決定する。この理念は素晴らしいものであり、絶対に継続しなければならないものだ。しかし全ての国民が正確で詳しい知識を持ち合わせているわけではない。全てを理解するには個人では限界がある。そこで投票によって議員を選出し、国民が間接的に政治に参加しようとするのが現代民主主義の理念だ。

選挙で選出された後、政治家、そしてそのトップである首相は強力な権力を駆使して重要事項を決定していく。そのために、国民は有能な政治家を見極めることが必要であり、国民レベルでは判断できないことを政治家は遂行していく。

しかし今回の国民投票では、政治家は直接的には介在せず、国民が直接決定するという形のものだ。そしてその結果が現在皆の知る通りだ。

果たして政治家が全てのことを国民投票として丸投げするのは正しいのだろうか?国家が間違った方向へ進みそうなときには、それを政治家が許される範囲内の権力をもって正すことも必要なのではないか。そのようなことをイギリスの国民投票からは考えさせられる。

多数決社会と政治家の権力行使のバランスを常に気にしなければならない。もちろん政治家が強権を持った極限が独裁であり、それが非常に危険であることは多くの人が認識している。しかし何かあるごとに全て国民投票に丸投げというのも、政治家の一部職務放棄とも考えられ、バランスを崩す原因にもなるのではないかと考える。

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