「プロ論」・大坂なおみ選手の発言について考える。

プロテニスプレイヤーの大坂なおみ選手が、試合後のインタビューを拒否すると宣言して物議をかもすことになった。テニスに限らず、確かに様々なインタビューを見ていると的外れな質問も多く、中には選手自身の人格を否定するものも存在する。そのような状況を考えると、大坂なおみ選手のようなトッププレイヤーが訴えかける事は非常に意義がある。しかし、インタビューを完全に拒絶するのは全く違うと僕は考えている。インタビューを受けることもプロ選手にとって試合を行う事と同じくらい重要な事だと思うからだ。それはなぜか?プロ選手がお金を稼げるのは直接的には体を動かしてプレーしているからではない。選手がプレーしている姿を“客やファン”が応援し、それに対してお金を投じているからだ。ファンがテレビを見ていることもスポンサーを通じてお金に変換される。そして一部のスポンサーが選手に多額の契約金を払えるのは、テレビなどに映る自社のロゴや使用している自社製品が広告となるからだ。決してプレーしている行為自体がお金を生み出しているのではない。そう考えると、インタビューも多くのファンが楽しみに注目しているのであり、それもプロとしての立派なプレーの一部と言える。

僕が大学院時代にお世話になった数学者は、当時の僕にとっては意外に思えることを言っていた。それは「自分は数学の研究によってお金をもらっているのではなく、(授業やゼミなどの)教育を行うことによってお金をいただいている」と言うものだ。もしかしたらその数学者の研究力について誤解する人もいるかもしれないので付記するが、その数学者は現在、東京大学の教授になられている世界的な研究者だ。確かに数学の研究で結果を出したところで直接にはお金には結びつかない。そういう意味では、教育によってお金を儲けているとは的を得た発言だ。

もし大坂選手が本当にプレーの技術だけを磨きたいのならば、プロになるのではなく客のいないテニスコートで黙々とプレーするしかない。そうすれば誰も口出しする人もいないし、自分の思い通りにプレーできる。しかしもちろんそれではお金は一円も入ってこない。どれだけ最強であっても、客の前でプレーしなければスポンサーもつかないであろう。すなわち大坂選手の言っていることは、「義務を果たさずに権利だけ主張している」と言える。

そして最後に大坂選手のメンタルについてだが、問題発言後になって、大坂選手がうつ状態だと言う事が言われるようになった。そのことについてはもちろん気の毒であるが、しかしプロ選手にとってメンタル面のスランプが体のケガとは別物だと言う訳ではない。もし大坂選手がうつで不調なのならば、療養などして万全の調子になって戻って来てほしいと願っている。プロの世界でうつだから大目に見てくれるなどと言う事は全くないのである。そこは自分の力で、そして時には他人の力も借りて這い上がって来るしかない。大坂選手は強靭な体を持っており、そして強靭な精神力の持ち主だ。それは大坂選手の実績が示している。ここまでかなり厳しいことを書いてきたが、僕自身も大坂選手の大ファンであり、これからもグランドスラムを制覇するような活躍をすることを強く願っているし、応援もしている。大坂なおみ選手、頑張って!

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