「基礎」と言っても、初歩という訳では全くない。「土台」という意味である。数学の土台に当たるところは、数学基礎論(数理論理学)である。数学基礎論が数学の一番の土台である割には、数学科の学生でも基礎論を修得している人は少ないであろう。僕もその修得していない人のうちの一人だが、数学をやっていて基礎をたどって行くとやはり基礎論になるので、最近、基礎論が気になっている。
基礎論の金字塔は何と言っても「ゲーデルの不完全性定理」であろう。これはすごく単純に誤解を恐れずに言えば「数学にはバグがある」ということだが、そもそもここで言う「数学」とは何か?数学の定義とは何か?ということが問題になってくる。ここで言う数学とは通称「ZFC」(ツェルメロ・フランケル体系に選択公理を付け加えたもの)のことだ。ZFCは基礎論や数理論理学をやっている人以外には馴染みのないものだが、ZFCがどのようなものくらいかは知っておいた方が良いかもしれない。
数学基礎論は数理論理学とも言われるように、数学よりも論理学に近いかもしれない。数理論理学者のことを「ロジシャン」と言うらしい。数学はロジックだけでは発展しないが、数理論理学を進めるのは99%ロジックなのかもしれない。
数理物理を研究しようと思うと、当たり前の事だが応用数学だけでなく純粋数学も必要だ。その純粋数学の基礎を突き詰めると数理論理学になる。従って数理論理学を勉強することは数学者にとっても理論物理学者にとっても非常に有益であるに違いない。最近、数理論理学の専門書をチェックしたので注文しようと思う。ゲーデルの論文の日本語訳も手元にあるが、「原論文でも」と思ったが、原論文がドイツ語であるので歯が立たない。まぁ、日本語でも英語でもいい。とにかく原典に当たることが重要だ。研究にも利用できるような気が(少し)する。
数学は非常に広い。しかし本質を知るにつれて既知の数学が少し窮屈になってきた。しかし未知の数学は恐ろしく広いはずだ。その証拠に数学の発展はエンドレスに続いている。既知の数学を勉強して理解するのは難しくないかもしれないが、未知の結果を出すのには骨が折れる。まぁ、何本骨が折れても目標とする結果が出れば良いのだが。